インボイス制度は、事前準備が9割
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8月と言えば、夏休みというのが定番であるが、ちょっとまとまった時間で普段はできないことに取り掛かるというのも、よくあることですが、今回話題として取り上げるインボイス制度の準備も、まだならば今のうちに手を付けるのが賢明です。
来年の10月1日の開始を控えたインボイス制度ですが、まだまだ「よくわからない」といった反応が返ってくるようです。
もちろん税務署からのインフォメーションも頻繁に行われているものの比較的密接な関連がある会社ならばまだしも、個人事業者ともなるとこれからといった人は多いのではないでしょうか。
そもそも、インボイスって何?
ちなみに「インボイス」とは、政府のパンフレットにも記されているとおり「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」のことをいいます。
このインボイスを利用して今後は消費税がいくらかかっているかを明確にしていこうというわけです。具体的には、請求書、納品書、領収書、レシート等、書類の名称は問わず、一定の事項が記載された書類をいいます。
また、インボイス制度とは、複数税率に対応した仕入税額控除の方式で、現行の区分記載請求書保存形式に代わり、令和5年10月1日から導入されます。
この中で、「仕入税額控除」という言葉が重要なポイントですが、これは、「事業者が納付する消費税額は、課税売上げにかかる消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差引いて計算するものです。
事業者においては、売上にかかる消費税をそのまま納めるのではなく、仕入れなどの経費にかかる消費税は差引いて支払うことになっています。
全ての会社がインボイス制度の前提・対象になるの?
インボイス制度の前提・対象となる事項としては、消費税を支払わなければならない事業者であるかどうかですが、消費税を納付する義務がある法人、個人事業主を「消費税課税事業者」といい、届出を出して消費税の納付を宣言する必要があります。
加えて、消費税課税事業者の対象となった場合は、速やかな手続きを行い、対応をしなければなりません。ただし、手続きをしなくとも課税売上高の判定により自動的に課税事業者になるので、納税を免れることはありません。
消費税の課税事業者の判定方法や必要となる届出は、多岐に渡っているため複雑です。当事務所では、お問合せを受付けておりますので、ご相談ください。
インボイス制度の事前準備
事前準備の筆頭は、適格請求書発行事業者登録です。
インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」となる必要があります。
「適格請求書発行事業者」となるには、事前に登録申請を行う必要があり、令和5年10月1日から登録を受けるには、原則、令和5年3月31日までの登録申請が必要です。
また、免税事業者は適格請求書発行事業者になることができなため、消費税の課税事業者を選択した上で登録申請を行わなければなりません。
さて、適格請求書発行事業者の登録申請のしかたの説明に移ります。
(1)登録申請方法の流れ
登録を受けようとする事業者は、登録申請書(適格請求書発行事業者の登録申請書)を納税地を所轄とする税務署長に対して提出します。
ただし、書面で提出する場合は、管轄するインボイス登録センターに送付しなければなりません。
その後、税務署による審査を経て、登録された場合は、適格請求書発行事業者登録簿に登載され、その旨の通知および公表が行われます。公表情報は、インターネットを通じて確認することができます。
(2)登録の通知と効力
登録の通知は原則として書面で行われますが、登録申請書をe-Taxで電子申請した場合は通知をe-Taxで受け取ることもできます。
書面による申請は、概ね1か月、e-Taxによる申請は1~2週間程度で登録通知を受領することになります。
会計事務所の申請代行を委託していることが多いと思われますので、e-Taxによる申請が利便性が高く一般的であると思います。
いずれにしても、登録の効力は、通知の日にかかわらず、登録簿に登載された日(登録日)に発生します。ただし、事前申請の場合は、令和5年10月1日となります。
(3)令和5年10月1日から登録を受ける場合の申請期限と特例
申請期限①:令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
申請期限②:特定期間の課税売上高等により新たに課税事業者となる事業者が令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になろうとする場合は、申請期限が令和5年6月30日まで延長されます。
申請期限③:上記①②までに申請書を提出することが困難な事情がある場合には、その困難な事情を記載した登録申請書を令和5年9月30日までに提出すれば、令和5年10月1日に登録を受けたものとみなされます。
つまり、インボイス制度にとって、いかに事前の準備が大切か分かるかと思います。
インボイス制度の適用を受けるのであれば、その内容に応じた対応策や手続き方法に関して十分に確認を施さねばなりません。
そして、免税事業者のままでインボイスの発行する必要がないという事業者を除けば、何はなくとも登録通知ということになります。
ただし、やむを得ず登録内容を取り消す場合も出てくるため、下記のとおり定められています。
(4)登録の変更、取り消し
①変更
登録事項に変更があった場合には、速やかに「適格請求書発行事業者の登載事項変更届出書」を提出することとされています。
②取り消し
適格請求書発行事業者が登録を取り消したい場合には、「適格請求書発行事業者の登録取消しを求める旨の届出書」を提出することで登録が取り消されます。
ただし、翌課税期間から取り消したい場合には「課税期間の末日の30日前」よりも前に提出する必要があります。そのため月によっては、一月前では間に合わないケースも出てきますので注意してください。
(5)新規設立法人の登録申請
課税事業者である新設法人の場合は、事業を開始した課税期間の末日までに、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出することで、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます。
新設法人は、設立当初のため、消費税に関する手続き一つをとっても、決定に時間を要する場合も多く判断が分かれるためです。この特例は、新設法人等の登録時期の特例といいます。
また、免税事業者である新設法人の場合は、事業開始時から適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、設立後、その課税期間の末日までに、課税選択届出書と登録申請書を併せて提出することが必要です。
免税事業者か課税事業者かの二者択一は、様々なケースが考えられます。
この選択いかんによっては、消費税の納付額に大きな差が生じたり、多額の還付を受けられるケースなど一様ではありません。
当事務所でも、多くのケースを経験しており、お客様と共に検討し判断しています。課税可否の判断ということでしたら、お困りのケースをご相談ください。
まとめ
今回は、ひとまず適格請求書発行事業者の登録申請につきまして解説しました。
消費税にまつわるものの中でも、「免税事業者」および「課税事業者」といった用語につきましては今後の解説を進める中で適宜説明を加えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。