年末調整も電子化でいこう!
目次
昨今の税務署サイドの関心事の一つは、税務行政の電子化である。
その理由は、昨年度の年末調整の電子化移行に発し、本年度6月11日、国税庁の掲げた「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0- 」にある。以下、その決意たる文言は「経済社会や技術環境は目まぐるしく変化しています。そうした変化に柔軟に対応し、『納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する』という国税庁の使命を的確に果たしていくためには、スピード感をもって取組を進めることが重要です。また、目指すべき将来像や取組の内容についても、時代の変化に応じ、絶えずバージョンアップしていく必要があります。 」と示した。
そこで、年末調整の電子化であるが、昨年度のキックオフを経て、前文にある通りにバージョンアップが図られた。そして、「年末調整の電子化に向けた取組について」だが、国税庁ホームページにその詳細が記されている。それと共に今年はパンフレット等が用意され、そのメリットを伝えるべく動いている。謳い文句は色々だが、いよいよ本格的に広めていこうという意思表示であり、これからという意欲が感じられるところだ。
ならば、電子化で年末調整の事務負担を軽減! を合言葉に。この時を好機として各企業は敢然と事務の効率化に立ち向かうことが求められるのではないか。会計事務所として取り組んでいる給与事務の合理化については、TKC給与計算システム「PX2」シリーズを通じて提供している。システムを利用する中で、その操作性の向上を考えると浮かび上がってくる問題点があるので見ていこう。
さて、給与計算システムを通じた年末調整の問題点として挙げられるのは「手作業では事務負担は増えるばかり」というポイントだ。
年末調整といえば、従業員が申告書を手書きし、控除証明書を添えて書面で提出する手続きが一般的。しかし、これからの時代、複数の拠点を持つ企業はもとより、テレワークの普及によって書面の配布や回収に手間暇がかかり、事務負担の増加が想定される。
前掲の「年末調整の電子化」とは、いかなるものだろうか。
国税庁は、経理担当者と従業員の年末調整にともなう事務負担を軽減するため「年末調整の電子化」を推進。「年末調整の電子化」とは、年末調整の一連の手続を「書面」から「電子データ」でのやり取りに変更する、というものである。具体的には、電子データを使って以下の①と②を実施するものである。
①申告書の提供(提出)
②従業員の控除証明書の取得
それでは、電子化すると年末調整がどのように変わるのか、実際の手続きの流れを見てみたいと思う。
電子化した年末調整手続きの流れ
1.従業員は保険会社等が発行する控除証明書等を電子データで取得
2.従業員はパソコンやスマホで申告書の電子データを作成
3.従業員は申告書と控除証明書等を電子データで経理担当者に提出
4.経理担当者は電子データを給与計算ソフトに取り込み
紙の書類がデジタル化することにより、アナログから変化することになったわけだ。
電子化で業務を一気に省力化したいという思いが、年末調整の電子化につながり、年末調整を電子化することで、経理担当者と従業員の事務負担の大幅な軽減が見込めるとの期待が大きく膨らむこととなった。
経理担当者側から見た「年末調整の電子化」
経理担当者側から見た「年末調整の電子化」について見ていこう。
1. 申告書の提供(提出)を電子化した場合
「PXまいポータル」を利用して、申告書と提供(提出)を電子化すると、かんたん・スピーディーに申告書を配布できる。また、控除額の給与計算システムへの手入力も不要になる。
2. 従業員の控除証明書等の取得を電子化した場合
控除証明書等から転記した内容のチェックや、書類の保管が不要になる。
経理担当者のメリット
それでは、年末調整電子化による経理担当者のメリットを見ていこう。
- 申告書はメールで通知するため、配布は不要!
- 申告書作成に関する従業員からの問合せが減少! 迷わずかんたんに申告書を作成でき、マニュアルも充実
- 控除証明書等は電子データから自動入力・自動計算するので、控除証明書のチェック・検算不要!
- 書類の差し戻しもメールで通知するため、書類のやり取りが不要!
- 控除額については、給与計算ソフトに自動で取り込むため、手入力が不要!
- 申告書・控除証明書等は電子データで保管するため、書類のファイリングも保管も不要!
従業員のメリット①
次に、年末調整電子化による従業員のメリットを見ていこう。
1. 申告書の提供(提出)を電子化した場合
パソコンやスマホで「PXまいポータル」にアクセスして、かんたんに申告書を作成可能。また、控除額は自動計算されるため、面倒な手計算は不要である。
2. 従業員の控除証明書等の取得を電子化した場合
控除証明書等の電子データの内容が自動転記され、手入力が不要。また、控除証明書等の書面の提出も不要である。
従業員のメリット②
次に、年末調整電子化による従業員のメリットを見ていく。
- 控除証明書等については、いつでも取得可能となるため、紛失しても再発行の依頼は不要!
- 申告書の作成については、画面の流れに沿って入力するだけで簡単に正確な申告書を作成
- 控除証明書等を電子データにて取り込み自動入力するため、転記も不要!
- 控除額は自動計算されるため、手計算も不要!
- パソコン・スマホでいつでもどこからでも申告書を提出でき再提出も簡単!
つまり、メリットを引き出すポイントは、控除証明書等にあり。となると、次なる施策は、控除証明書等の電子データでの取得をすすめていくこととなる。
「PXまいポータル」を利用して「1.申告書の提供(提出)」を電子化するだけでも、業務量は減少する。しかし、控除証明書等からの転記やそのチェックといった手作業を減らすことが、さらなる省力化のポイント。ここは是非とも、「2.従業員の控除証明書等の取得」の電子化もすすめていこう!
控除証明書等の電子データ提供に対応する保険会社等が拡大した今年は、年末調整の電子化をすすめる好機といえそうだからだ。
※控除証明書等の電子データ取得に対応する保険会社等はこちらのページから。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm
従業員サイドの実施事項について
年末調整を電子化する場合、従業員は事前準備として以下の3点を実施する必要がある。経理担当者は以下の事項を従業員へ説明し、年末調整の電子化に必要な準備をしてもらおう。
1. マイナンバーカードの取得
控除証明書等を電子データで取得するにはマイナンバーカードが必要。マイナンバーカードを取得していない従業員を確認し、取得依頼をかける。マイナンバーカードの申請から交付には1か月以上かかるため、早めに案内し、年末調整に間に合うように取得期限を決めておくことが大切だ。
※リーフレット「マイナンバーカードで年末調整手続きがかんたんに」を利用のこと。
https://www.tkc.jp/system/nencho/2021/#mynumber
2. 控除証明書等の電子データ取得の事前準備
生命保険料などの控除証明書等の電子データは、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)または保険会社等のwebサイトから従業員自身で取得してもらう必要あり。マイナポータルの利用や保険会社等のWebサイトの利用には事前に設定が必要となる。
下記の資料をメール等で配布し、従業員に控除証明書等の電子データ取得の事前準備をしてもらおう。
※「従業員の皆様へ 控除証明書等の電子データで取得するための事前準備」(別紙)を利用のこと。
https://www.tkc.jp/system/nencho/2021/#enclosure
3. 申告書の入力・提出
従業員は「PXまいポータル」で申告書を作成。従業員向けのマニュアルをダウンロードし、申告書の受付開始時にメール等で従業員に配布することで対応し、操作手順は動画でも確認可。
https://www.tkc.jp/system/px/pxmyportal/movie/
プラスαとして、年末調整だけじゃないマイナンバーカードでできることとは、以下のとおり。
◎本人確認書類として利用できる
◎住民票などをコンビニで取得できる
◎健康保険証として利用できる
◎運転免許証との一体化(予定)
※リーフレット「マイナンバーカードで年末調整手続きがかんたんに」を確認。
https://www.tkc.jp/system/nencho/2021/#mynumber
安心してご利用いただくための充実のサポート体制
導入:貴社に合わせて、システムを導入・設定。納品と同時にシステムを利用開始。
運用:貴社に応じたコンサルティングを継続的に実施。最適なシステムの運用支援。
更新:プログラムは自動更新。常に最新のシステムを追加費用なしで利用可。
質問:システムに関する質問は、株式会社TKCの専門スタッフがバックアップ。
※上記「PXまいポータル」のご利用には、「PXシリーズ」または「あんしん給与」(給与計算ソフト)の導入が必要です。PXまいポータル単体ではご利用いただけません。
最後になりますが、私どもが属するTKC会員事務所のサポートについてご紹介します。システムの導入も運用もTKC会員事務所がご支援します。会計・税務のプロフェッショナルであるTKC会員事務所(TKC全国会に加盟する税理士・公認会計士)は「PXまいポータル」の導入から運用までサポートするので安心です。
税務行政の電子化が叫ばれる今、K&K Japanは給与計算から年末調整まで一貫してバックアップしてまいります。会社の給与計算事務のさらなる効率化・省力化を図ってまいりましょう。「年末調整の電子化」に関するご質問などは当社にお気軽にご連絡ください。